2009年の韓国映画、「母なる証明」(監督:ポン・ジュノ)です。シネマライズで鑑賞しました。
この作品、先日お会いして少し隣で呑んだ寺脇研さんが絶賛されているのをブログ記事で読んで(とは言っても、読んだのは一言コメントだけですが)モーレツに観たくなり、一緒に行く友人を強引に説得して(笑)行ってきた次第です。ええ、そこまでした価値がありましたね。あまりにも素晴らしい作品でした。
上映中、日本なら「モンスターペアレント」と揶揄されてしまいそうなトジュンの母親・ヘジャの行動の数々に、「自分の母ならどう振る舞うだろう?」ということを何度も考えさせられました。小中学生のころ、自分を殴った学校の先生に「殴ってもいいけど頭部はやめてくれ」と文句を言いに行った母親を、当時はうとましくも思っていたことなんかも思い出してしまいました。
これは「私の中のあなた」でも感じたことなんですが、母性愛というのは、やはり理屈ではなく本能なのだと今更ながらに思い知らされます。世間や状況がどんなに訴えようともトジュンが犯人ではないと信じて行動する前半、真実を知りトジュンが釈放されてからの後半、母親としてのヘジャの動物的な部分には一切のブレなどなく、そのことが表現されていると思われるラスト近くの添い寝のシーンは、ある種の「気付き」を私に与えてくれました。
数年前でしょうか、ある方に「自分の子どもを持つのは怖い。もしも出来の悪い子だったとき、自分はどんな感情を持つか、その子への絶対の愛を持ち続けることができるのか、自分には確信がない」と打ち明けたとき、「そんなことはない。出来が悪ければ悪いほど、むしろ可愛くて可愛くて仕方なくなるものですよ」との言葉を頂き、ハッとしたことがあります。「そうか、愛情というのは論理的思考の帰結ではなく、本能的なものだんだ」というあまりにも当たり前のことを、その方の言葉も、そしてこの映画も自分に教えてくれているようでした。(そうなると、女性が高収入や高学歴を求め、男性が他者に獲得した嫁を勝ち誇らんとする行動の歴史的繰り返しのようにも見える結婚という社会制度は何なんだろう?と改めて思ってしまうのも事実なのですが)
それにしても、この映画を観てしばらく経過すると、「よく考えてあるなぁ、してやられたなぁ」感が自分の中でどんどん膨らんできますね。冒頭の踊りのシーン、そこにつながる中盤の事件、そこで終わりかと思ったら、まだまだ描くべき物語があったという驚き(映画館では、踊りの次のシーンに進んだとき、「え、この後は描かないほうがよいのでは?」なんて思ってしまった)、そしてラストのバスでの踊り…。印象に残る映像や演出を効果的に使っていて飽きさせない工夫をしてるなぁ、と。ちょっと思うのは、「こういう工夫なしでも十分素晴らしい作品なのではないかなぁ」ということ。もし、冒頭と中盤のダンス、ラストのダンスがなけらばどんな印象を持っていたのか、可能なら太ももにハリを打ってこの映画の記憶を消して、DVDからそれらのシーンをカットして見直してみたいなぁ、などとも思ってしまいました。
個人的満足度:★★★★★
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10 Comments to “母なる証明”
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母なる証明/마더 ... 『殺人の追憶』、『グエムル -漢江の怪物-』のポン・ジュノ監督が送るサスペンスミステリー。主演は“韓国の母”と呼ばれる国民的女優キム・ヘジャ。そして共演に5年ぶりに兵役から復帰したウォンビンが出演。殺人の罪を着せられた知的障害を持つ息子を助けるために、狂気ともとれる母の愛で真犯人を捜す姿を鋭く描いた作品だ。原案・脚本もポン・ジュノ監督が務めている。...
母なる証明・・・・・評価額1750円... 凄みのある映画だ。 デビュー以来、一作ごとに全く異なったジャンルの作品に挑み続けている、ポン・ジュノ監督の長編第四作はナント「母物」......
母なる証明... 凄い作品だ。(韓国映画の場合,開口一番は,この言葉しか出てこないことが多い。)あらゆる予想を覆す衝撃の展開と,見方によっては複数の解釈を許す描き方は,見終わった後に強烈な余韻を残し,場面場面での母と息子の表情が繰り返し脳裏に浮かんで消えなかった。 [E:danger]完全ネタばれ記事です。未見の方は...

こんにちは!
コチラの作品、、凄いしか言いようがないですよね!
感動というより ただただ衝撃をうけてしまいました。
ちょっと違いますが 市橋容疑者の母親のコメントをTVなどで聞いてたとき この作品を思い出してしまいました。
世界中が息子の敵になっていても、どんな現実が目の前にあったとしても、『かわいい息子』の母親としての行動を貫く、そんな母性って今までどの映画にも世界ですよね。
強烈な母の愛であり、それが狂気を帯びていく様子が克明に描かれてました。でも傍から見ると狂気でも、母には全く当たり前のことですよね。要は、どんな母で合っても彼女のような可能性を秘めているんでしょう。そこの部分の感覚は恐らく男には永遠に解らないと思いますけど。最初のダンスで観客に挑戦したとポン・ジュノ監督は言っています。正直に負けました。(笑)それがラストのあのダンスに繋がるなどとは誰が想像できるというのか。あの発想自体もう賞賛に値します。
別に悪さ自慢をしたいわけではないのですが、ワタクシ子供の時は結構やんちゃで警察にもよくお世話になりました。
今でも自分の悪事を思い出すと恥ずかしくなりますし、後悔の念に駆られるのですが、過去は消えません。
というわけで、親にはかなーり迷惑をかけてしまい、両親とも精神的にかなりのダメージを被ることになってしまいました。
それでも今は何とか更正、というかまぁ脇道にそれていない程度で生きていけているので、両親には言い表せないほど感謝しています。
以前帰省したとき、母親に「よく捨てずに育ててくれたね」といったところ、「何度も捨てようかと思ったけど、私は母親だからね。両親も子供も、お互いを選んで生まれてくるわけじゃない。一緒に生きていくうちに、母親になって子供になっていくんだ。子供が出来たから母親になるんじゃなくて、子供を育てたから母親なんだ。だからアンタが実家を出て何とか生きていると聞いて、母親になれてよかったと思うんだよ」と言っていました。
確かに自分の子供が器量が悪かったら、先天性の障害があったらどうしようと思います。でも、実際に自分の血のつながった子供はどうしてもかわいいものだそうです。
親戚に片足に障害のある子がいますが、とても素直で良い子です。そしてもちろん、両親もとてもいい人です。
子育てが本能である以上、「社会性」の無い人間は社会との整合と言う点で苦労するのでしょうが、あんなに子供を愛せる女性をうらやましくも思います。
それにしてもmasaruyoさんは韓国映画を結構おすすめされているので、興味が湧いてきました。
> コブタさん
ええ、私もです。ストーリーが、いちいち予想をちょっとずつ超えた展開になっているものだから、「あっけにとられっぱなし」という感じです。それもあって、「こりゃ、監督にやられたなー」という気になってしまって…。とにかく見事でした。
私は「親になる」ことを未だに体験していない&それが少し怖いことだと思っているのですが、この映画を観て、「実はそれは考えすぎなのではないか」と思いました。もっと理屈じゃなくてフィジカルに行動すべきなのかも、と。
> KLY さん
なるほど、愛情が狂気に変化していく作品は数多いですし、現実世界でもいろいろな事件が起こっていますね。この作品はその中でも母性愛のすさまじさを描ききっていて、それはやはり痴情ものと比べても「動物的な」迫力があるなぁと思いました。
ダンスですが、効果的に使われていて、すごいインパクトを与えてくれているなぁと思う反面、やや技巧的に過ぎる気がしなくもありません。ちょっと鼻につく感じといいますか。まぁ、そんなものは観賞後1週間とか経過してから何となく思い始めたことですし、この映画の素晴らしさをなんら失わせるものではないと思いますが。
> onaplain1119 さん
け、警察のお世話ですか!何をしたのでしょうか..。(^^;(今度じっくりとキルケニーでも呑みながらお聞かせいただければと)私も親には迷惑をかけたつもりでいましたが、onaplain1119さんには負けそうです。
それにしてもonaplain1119さんのお母さんはモノゴトがよく分かっていらっしゃるというか、親という「本能のままに子を愛する存在」でありながら、その感情の分析をもご自身でされるという、非常に高いインテリジェンスを持った方ですねぇ。いや、「その親にしてこの子あり」という気がしますよ、ホント。
子を愛するということに関しては、上の記事に書いた「ある方」は男性でして、彼は「女房のためには死ねないけれど、子どものためになら喜んでこの命を差し出す」とおっしゃっていました。どうやら、子への本能的な愛情は、男性でも持ちうるもののようです。そういう話を聞くと、「ああ、やはり私も人の親になるという体験をしてみたいかも知れない」などと思いますねぇ。
韓国映画ですが、独特のパワーがあって非常に面白いです。もちろん、「韓国版・ROOKIES」みたいなのもあるのかも知れませんが、日本で評判になるのはやっぱり社会性や芸術性を持った作品ですから、やはり見ごたえがありますね。韓国映画のすべてが素晴らしいわけではないと思いますが、少なくとも私が観てきた作品群は素晴らしいものが多いですね。(キム・ギドク作品は良さがまだ理解できていないのですが….あ、でもonaplain1119さんはお好きな気がします)
今年は韓国映画の当たり年。
「チェイサー」に次いで凄まじい映画を見せてもらいました。
愛という一文字で表される感情の深さ、恐ろしさをこれほど見事に表現した作品は記憶にありません。
いや~ポン・ジュノはどこまで進化するのか。
すでにスタートしている次回作が楽しみでもあり、恐ろしくもあり。
> ノラネコさん
私は韓国映画をさほど知っているわけではないのですが、そんな初心者の私でもチェイサーとこの作品の凄まじさははっきりとわかります。本当に素晴らしい映画でした。脚本も演技も細部の演出も、かなり練り込まれていて常に観客(私)の予想の少し上を行かれてしまう、そんな感じでした。
次回作もそうですが、まだ観ていない彼の過去の作品を見るのも楽しみになってきました。
お久しぶりです。
これは私も今年のベストテンに入れた作品です。
いろんな工夫,よく練られた構成でしたが
たしかに描かれているテーマだけでも
十分に斬新というか
「こんなの観たこともない」物語でありました。
ポン・ジュノ監督やはり恐るべしです。
この1年お世話になりました。
来年もよろしくお願いいたします。
> なな さん
お久しぶりですー。この作品、(その後に公開した)私もベストテン入りとなりました。「スゴイ」としかいいようのない映画でしたね。印象的なシーンがありすぎて、なんだか記憶が錯綜しちゃっています。DVDかBlu-rayが出たら、もう1度観てみたい作品でもあります。
> この1年お世話になりました。
> 来年もよろしくお願いいたします。
こちらこそ、よろしくお願いしますー。